機内持ち込みギリギリのバックパックとカメラ1台とレンズ2つが入ったカメラバッグをベンチに置く。自分勝手に決めていろんな人に心配や迷惑をかけてようやくここまで来た。仕事を辞めたこと。親に心配をかけたこと。4年間付き合っている彼女と遠距離になること。いろんなものを振り切ってここまで来た。いや、来てしまった。
搭乗1時間前。出発ゲートのアナウンスが鳴りどんどん乗客が集まってくる。
「本当に行っていいのか? 本当にこれが正しい選択だったのか?」
英語力を伸ばすために決めたこの海外渡航だったが、仕事を辞めてまで行く必要はあったのか、 彼女との遠距離リスクを冒してまで海外に行く必要があったのか。迷いと後悔がふつふつと自分のなかで湧き上がってきた。
「時間を無駄にしているんじゃないか? 」
地元の仲間が先月結婚した。同期はこの瞬間も毎日働き自らの技術を高めてキャリアを積んでいる。英語を伸ばして海外経験をすれば自分がしたい仕事に就ける、きっといい未来が待っている、とここまでは希望しかもっていなかったがそれに伴なう焦りや不安、リスクに今ようやく現実味を帯びて考えるようになった。
搭乗30分前。出国前に開くようにと言われた彼女の手紙にはこう書いてあった。
今どんな気持ちかわからないけどそんなに気負わなくて大丈夫だから。行くことを決めたときから必ず何かが変わっている。1番応援している。
たぶん人生で初めて人から応援されたことで大号泣した。勝手に遠距離になったのにそれを認めて受け入れてくれたこと。そして今1番不安に思っていることを言ってくれたこと。すべてが今この瞬間に欲しかった言葉だった。
この選択に意味があるかはこれからの努力次第。何がどう変わるかはわからない。
でもどう生きていくか探し続けるこの選択こそが、いつかきっと「これでよかった」と思うための布石になるのだと思う。今切るべきカードを人と違うタイミングで使う瞬間が私に訪れただけ。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら最後に彼女に電話をし、涙の追撃を喰らってから飛行機に乗り込んだ。対面席に座るCAさんにはドラマのワンシーンにでも見えたことだろう(イケメンではない)。