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(獣医大学)ポリクリ秘話①〜パワー系SHIBA の逆襲〜

2022-05-24

ここは夜の動物病院。

ポリクリという名の実習で僕と友人Y君の2人は患畜を待っていました。

今日は暇そうだな

暇な日はラッキーです。23:30で外来を閉めるのであと30分で今日の実習は終わり。あとは上の仮眠室で寝るだけです。コロナ以前は朝まで受け付けていたらしく、先輩たちは朝まで交代で起きていたそうです。

受付終了まであと15分。

くるなくるなと思う時ほど電話がかかってきます。

ジリリリリリリ

VTさん(動物看護師):今からハンバーグを誤食した子がきます〜!

先生:犬種はなんですか?

VTさん:大きい柴です!

先生:大きい柴かぁぁ……

先生のテンションが若干下げ気味なのは気になりましたが、誤食、それもさっき食べたばっかりの子らしいので処置もそんなに大変ではないはずです。薬を使って吐かせればいいのです。すぐ終わる、はず。

なんなら1日の最後に柴犬めちゃくちゃ可愛がったろくらいに僕らは思っていました。

電話から15分後、少々太り気味な柴犬がやってきました。名前はマル。マルマル太っているからかマルなのかな、なんてしょうもないことは置いといて、オーナー曰く、目を離したすきに机の上のハンバーグがなくなっていて口の周りについていたのがバレたとか。

ハンバーグを食べて満足気なデブ柴。今から薬で気持ち悪くなることも知らずにいい気なもんです。

今は平気な様子でもほっとくと【タマネギ中毒】という冗談みたいなホントの病気になってしまう可能性があるので処置が必要です。

写真はイメージです。実物ではありません。

オーナーとの問診も終わり、処置に移ります。薬を静脈投与しなければならないので、まずルート(留置、静脈ライン)を取ります。

Y君が保定(動物を押さえる係)僕がルートを取る係になりました。Y君が保定しようと首に手を回した瞬間、

マルは大きな身体を精一杯捻って逃げ出しました。

いや正確に言えば屈強なVTさんの手によって診察台の上から飛び降りることもできなかったのですが、保定しようとすると力の限り保定の手から逃れようとするのです。

噛む様子はないものの、エリザベスカラーをつけることにします(首の周りにつける咬み防止のプラスチック)。カラーをつけようと首の周りに手を回すと、

手がつけられないマル

爆発。オーナーを呼んで落ち着かせようとするも、止まらないマル。誰も止められないマル。暴れ回る食パン2斤分のお尻に誰も手がつけられません。

かれこれ20分。飼い犬をあやすオーナー。カラーをつけたいVTさん。両足で挟み込んで保定を試みる先生。無力にあたふたするポリクリ生。被害者面をするマル。

被害者面をするマル。

被害者面のマルと無力なポリクリ生

この時全員の心がシンクロしていました。

自分がハンバーグ食べたのが悪いんだろ…

ようやくカラーをつけ終わり、ルートを取りにかかります。カラーの攻防で力を使い果たしたかのように見えたマル

Y君と僕:いける!

アルコールをかけ、駆血して血管を出し、留置針の針先を確認します。針先がチョンと皮膚に触れた瞬間、

マル復活!

必死に体を捻りまわし全力で大人たちに抵抗する様子はまるで湯婆婆の子供。

Y君と僕:ごめんね…もう先生に代わってもらうね…。

VTさんの保定と先生の技術によって暴れる隙もなく一瞬で後ろ肢でルートをとられるマル。催吐薬を注入されて一気に気持ち悪くなるマル。

5分もたたないうちにハンバーグのほぼ全てを吐き戻しました。

遠い目をするマル

マルを見るとなんとも悲しい顔をしています。

柴犬はもともと猟犬として飼われていた歴史があり、さまざまな刺激に対して敏感な性格を持っていることが多いのだとか。

マルも例に漏れず繊細な子だったのです。

知らない人に触られて怖かったよね。ごめんねマル。

オーナーさんにこれからは注意してくださいねとアドバイスしてマルをお返しします。

元気でな、マル。変なもの食べたらダメよ。

教訓犬が食べるものには注意すること

時刻は1:00。

こうやって今日も動物病院の夜はふけて行きます。

終わり。

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